働き方改革に取り組むならまずこの一冊「生産性(伊賀泰代氏)」を紹介

140字紹介

日本企業におけるホワイトカラーの職場で軽視されがちな生産性。生産性に対する勘違いとその重要性をマッキンゼーの事例を取り上げながら説明する。生産性向上のための具体的な人材育成方法も紹介しており実用的。企業の働き方改革担当者必携!

著者紹介

伊賀 泰代(いが やすよ)氏

私は 2010年末までの 17年間、コンサルティングファームの McKinsey and Company, Japanに在籍し、10年以上に渡ってコンサルタントの採用、育成に携わってきました。

引用元:伊賀泰代氏公式サイト「MY CHOICE」(http://igayasuyo.com/profile)

プロフィールを見ると、最初から採用・育成に携わっていたわけではなく、証券会社からマッキンゼーに転職されて、始めはコンサルタントとして勤務されていたんですね。

どのような経緯でコンサルタントから採用、育成といった人材関連の業務に携わるようになったのか気になるところです。

ココが読みどころ

軽視される生産性

生産性は製造現場以外関係ない、生産性を追い求めると良い発想が浮かばないといったことが生産性に対する間違った理解の例として挙げられていますが、私の勤めるメーカーでも状況は同じです。口に出す人はいないものの、生産性向上を強く意識した改善を行うのは製造現場だけです。

そんな状況の中、働き方改革の取り組みを始めるにあたって重要なのは、正しい働き方改革を進めるには皆が生産性向上を意識した取り組みが大事だと意識づけることと感じており、その説得のために本著の導入部分は必読の箇所です。

Motivation  for innovation

本著で、私にとって最も価値あるポイントは以下の箇所でした。

ビジネスイノベーションを起こすためには、社員に「問題認識力=課題設定力」と「その問題を一気に解決したいという強い動機づけ」をもたせることが不可欠になるのです。これがまさに「Motivation for innovation」であり、そのために大きな役割を果たすのが「生産性という概念を日常的に、強く意識させておくこと」なのです。

このパートで、働き方改革には一人一人が今の仕事の仕方を当たり前と思わず、常に新たな方法を考える組織風土を作る必要があることが分かりました。

組織風土づくりこそ最大の困難を伴うと思いますが、できなければその組織はいつか淘汰されてしまいます。僕にとって新たな課題が生まれるとともに、組織変革のための方法という新たな学びへの興味が湧く、有意義なパートでした。

人材育成に対する示唆

本著では「トップパフォーマーの潜在力を引き出す」と「人材を諦めない組織へ」という2つのセクションで人材育成の考え方が紹介されています。

多くの企業では研修やOJTなどの人材育成施策が平均的社員をターゲットとして実施されていますが、それはトップパフォーマーと言われる優秀な人材(となる可能性を秘めた人材)を育成する機会を奪っている可能性があるということから、優秀な人材の潜在力を引き出し育成するための方法を紹介しています。

一方で、ある程度年齢を重ねた成果を出せていない社員のモチベーションを上げ、成長機会を与えるための方法についても紹介されています。

それぞれ観点は異なりますが、これまで目を向けていなかった2つの人材層を育成することが組織全体の底上げに繋がるということで、次なる人材育成施策検討のヒントを得ることができました。

マッキンゼー流資料の作り方・会議

働き方改革にそのまま使えるような資料作成や会議の方法が紹介されています。トレーニングは必要ですが、マッキンゼーではできて当たり前のスキルとして考えられているものです。

働き方改革の最初の取り組みとして、マッキンゼー流の会議と資料作成を推奨してみたいと思います。簡単にできるものではないものの、全ての人が実践できて、かつ短期的に効果が期待できそうです。

研修の生産性を高める

研修についても新たな視点を得ることができた。具体的にはロールプレイング型研修の効果を紹介しているが、私自身あまりロールプレイング形式の研修に対して効果を疑問視していました。

現在、ロールプレイングの演習を含んだ研修を実施しているのですが、ちょうど本著を読んでいる時に研修を企画しているところでした。本著のおかげで本当にロールプレイング形式の研修は効果的なのかという疑問は払拭されました。

読むべき人

本著を読んで、生産性は経営者から一担当者まで全ての社員が意識しなければならないことだと思いました。ですから本来読むべき人を限定すべきではないのですが、社員全員が生産性を意識する会社にするために、まずはどんな人が読むべきか考えてみました。

働き方改革担当者

働き方改革の一担当として何かヒントになる書籍はないかと思っていたところで、社会派ブロガーちきりん氏のブログでこの本に出会いました。

働き方改革が盛んに叫ばれ、取り組み始めた企業が多いと思いますが、なかなか取り組みを理解しない人や働き方改革の本質を分かっていない人に向けて説得やレクチャーする際の参考になる。書籍に書かれている内容そのまま伝えても効果があると思います。

教育施策担当者

本著では「成長とは生産性向上」という考え方について説明されています。このパートを読んだ時、教育施策を担当する者としては絶対にブレない指針を得ることができたと思いました。

何のために英語研修を実施するのか?何のために業務に関する知識を身につけるのか?何のためにコミュニケーションを促進する研修を行うのか?

全ては生産性を高めるため。

従業員の工数は研修自体にかかる費用なんかよりずっとインパクトが大きいので、従業員に受講してもらって本当に意味のある研修を企画したいと考えていましたが、企画の軸ができました。迷ったらどうすれば生産性向上に資するか、この知識はどう生産性向上に繋がるのかを考えるようになりました。

関連書籍

自分の時間を取り戻そう

こちらはちきりんさんの著書。伊賀氏同様、生産性をテーマにしているため読んでみました。

内容としては、伊賀氏の「生産性」よりも一般的な事例を紹介しながら、人生の生産性を向上させるための考え方を紹介しています。

こちらの方がタイトルとしては万人受けしそうなので手に取る方も多いのではないでしょうか。

人生の貴重な資源である時間とお金の正しい使い方を学べる一冊です。

採用基準

こちらは伊賀氏の代表的著書のひとつ。私は新卒・中途採用にも関わっているので、是非読んでみたいと思います。